inスイス_クール、ヴァルス

3/6今日は旅の疲れをズンドー建築で癒すのが目的だ。まずは「ローマ遺跡のためのシェルター(Protective-Structure-for-Roman-Ruins)」を見学するためにBaselSBBからChurへ。ここへは実際に行った人に行き方を聞いておかなかったらかなり時間をロスしてしまうところだった。この建物の内部へ入るためにはChur駅のインフォメーションで鍵を借りなければならないのだ。鍵を借りて地図を貰い目的地へ急ぐ。黒く塗装された木ルーバーの間隔は狭く外部からは一つの大きな塊のようにも見える。一見内外が隔離された空間のようにも見えるが半外部空間となっており、内部へ入るとぼんやりと光が差し込み外の風を感じる。天井に設けられたトップライトが絶妙で均質なルーバーで囲われた空間を切り裂いている。これがルーバーに対して平行に設けられていたらキレイな空間で終わっていたのかもしれない。斜めに切り裂かれたトップライトからはまとまった光が差し込んでくる。神秘性と厳格さを併せ持った空間だ。特にコストがかかっているようでもなくとても簡素な素材で構成されている。素材の選択と設計センスによって空間はここまで変わるのだ。惜しむらくは外が雪だったこと。晴れていればまた違う印象になったであろう。非常に勉強になった建物だ。
ChurからSumvitgへ。「聖ベネディクト教会(Saint Benedict Chapel)」に行こうとするが雪はますます激しを増す。というか吹雪いてきて数十メートル先は見えない状況だ。ここへはかなり険しい山道を歩いて行かなければならない。これではハイキングどころか雪山トレッキングになってしまう。しかも20kgもある全ての荷物を背負って。俺は挑戦はするが無謀な事はしない。ここへは晴れている日にまた来よう。スイスは非常に気に入ったのでまた来る機会はあるだろう。
ChurからIlanzへ。そこから黄色いポストバス(以前は郵便物を運んでいたことからこの名が付いた。現在は山間部の小さな村々を結んでいる)に乗ること40分。今回の旅で外すことのできない建物の一つである「テルミナルヴァルス(Vals-Thermal-Bath)」へ。テルミナルヴァルスはホテルとレストランを併設した温浴施設だ。ヴァルスの町へ近づくと視界に入ってくるかと思っていたが全く見えない。雪を被りホテルと木々に隠れるかのようにひっそりとそれは建っていた。周囲の自然に馴染んで見えるのは地元で採掘される片麻岩を用いているからだろう。ここだけは唯一一般のツーリスト並の贅沢をしようと思っていた。そのためにスイスに入ってから夜は全て自炊、昼はサンドイッチのみと激貧生活をしてきたのだ。しかしHotel-ThermeのZumthorRoomに泊まろうとするが満室とのこと。やはり土曜日、予約しとくべきだったか。結局4ランク中で一番安いホテルしか空きがなかった。まあでもシングルで朝食付き、今まで宿泊した部屋と比べると当然別格だ。ホテルに宿泊すると入浴料の40フランも含まれている。夕食も付けてトータル180フラン(16000円くらい)だった。この時初めて気が付いたのだが意外にレートが良い。ハッピーな気持ちになる。
さっそくVals-Thermal-Bathへ。内部は洗練された洞窟にいるかのようだ。全てが考え尽くされている完璧な空間だ。壁面は数種類の大きさの片麻岩がランダムに積層され自然味のある表情を創り出している。少し光沢があるように見えるのは片麻岩の素材にようものだろうか。しっとりと手に馴染む感触が心地良い。水中から照らされた照明は壁面に映し出され幻想的な空間を演出し、天井のスリットから漏れる光はボリュームを和らげ浮遊しているかのようだ。緩やかなスロープを下るといつの間にか水は肩まで浸かりプールのような感覚で楽しむことができる。当然海外なので水着着用で混浴だ。周りはカップルばかりだが気にしない気にしない。さすがに冬なので湯から上がると少し肌寒いのでずっと浸かっていた。基本ぬるま湯だが中には日本の温泉のように熱い湯の風呂もありそこで温まることができる。居心地が良いので2時間以上いてしまった。夜は美味しい食事に快適なベッド。満足な一日だ。ズンドール先生と親切なスイス人の皆様に感謝。
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