inスイス_バーゼル、ヴィトラ(一時ドイツ)

3/4朝ベッドから窓を覗き込むと雪が降っている。ちょっと起きるのが嫌になるが7時起床。残された日数は少ない。一日たりとも無駄にはできない。朝食を食べて街へ繰り出す。まずはトラムとバスを乗り継いでVitraへ。Vitraへは一時的にドイツに入国することになる。バスに乗車した際に2.2ユーロと運転手に言われた時は一瞬焦った。ユーロ持参しといてよかったよ。しかしパスポートチェックなどは全くないままバスはVitraへ到着。次のスケジュール上Vitraに滞在できる時間は2時間半だ。
「ヴィトラ社(Vitra)」は有名な家具製作会社だ。敷地内には著名な建築家によるミュージアムショールーム、元消防署や会議室などあり一度に様々な建物を見学することができる。しかし自由に見学できるのはゲーリーによるVitraDesignMuseumと最近竣工したヘルツウォーク&ドムーロンによるVitraHouseのみ。残りはツアーに参加しなければ見れない。ツアー時間は12時と14時の1日2回という事前情報を入手していたのだが実際行ってみると11時・13時・15時の1日3回に変更されていた。実はこの後のスケジュール的にツアー見学は諦めていたのだが、この変更のおかげで2時間ツアーの内1.5時間だけだがツアーに参加することができた。料金は9ユーロ。自由に見学させてくれたら均等に全ての建物を見ることができるのだが建物の説明が長い。工場内と安藤忠雄の会議室の内部見学は断念。必死で走ってバスに飛び乗った。しかしツアーが11時スタートだったため最近竣工したVitraHouseはゆっくり見学することができた。外観は平屋の住宅を様々な方向から積み上げたような奇抜な形ではあるが内部空間は見ごたえがあった。空間の切り取り方が非常に上手い。外から見た平屋の住宅のような形一つ一つがヴィトラ社のショールームになっているのだが次から次へと見え隠れするセンスの良いショールームは非常に好奇心をそそられる。大きく開けられた開口部からは美しい景色と太陽の光が降り注ぎ気持ちが良い。11時前頃から天候が回復しだしたのだ。結局1時間VitraHouseの見学に費やした。
次の目的地へ向かうためバスに乗っている間もヒヤヒヤしていた。駅へは出発の10分前に到着、すでに列車が来ていた。お昼のサンドイッチを購入して急いで列車に飛び乗る。こんなに急いでいるのは次行く建物であるゲーテアヌムの大ホールの見学時間が14時から14時半の30分しかないからだ。目的地であるDornach-Arlesheimに到着したのは13時半だ。その辺の人にゲーテアヌムへの行き方を聞くと「あそこに見えるでしょ?」と言われる。振り返ると山の上に奇怪な形のコンクリートの塊が少し見えるではないか。一瞬ゾクッとした感覚が襲う。少し駆け足になりながら坂を上り始める。途中何人かに道を聞くが百発百中みんな知っている。それほど地元では有名な建物のようだ。ゲーテアヌムに近づくにつれ模倣された住宅が目に付く。「ゲーテアヌム(Goetheanum)」は元思想家であるルドルフ・シュタイナーによって設計された建物だ。坂を上り切りゲーテアヌムを見た時はさすがに驚愕した。この建物はデザインの好き嫌いを突き抜けている。彫刻的で圧倒的なコンクリートの重量は見る者を摑まえる。中に入りたいのをぐっと堪え建物の周りを一周する。心を静め中へと入り正面の階段を上がると大ホールの扉が。とてもとても重量感のある木扉だ。木の取っ手を掴むと扉全ての重量がずっしりと圧し掛かってくる感覚だ。扉を開けるとそこにはもはや俺の言葉では表現できない光景が広がっていた。写真にも表現できないので載せない。自ら体感して欲しい空間だ。時間の許す限り建物内を見て周るがゲーテアヌムはルドルフ・シュタイナーの精神そのままだ。本当に彼の精神世界へ飛び込んでいくような感じにさせられる建物だった。
ゲーテアヌムへの行き方はBaselSBBからDornach-Arlesheim(3つ目の駅)まで行く。ユーロパスを持っていれば予約料金などは必要なし。駅へ到着して列車を降りた側(バス停や売店がある方とは逆側)の山の上にゲーテアヌムはある。一本の坂道だが分からなければその辺の人に聞けばすぐに教えてくれる。坂を上ること15分くらいで到着する。そういえば大ホールの見学時間は13時半から14時半の1時間に変更になっていた。
帰りの列車の時間が迫っているので走りながら駅へ向かう。バーゼルへ戻りトラムを乗り継ぐこと40分程度で次の目的地へ到着する。ここもぜひ見ておきたかった美術館の一つだ。
「バイエラー財団美術館(Beyeler Foundation Museum)」はパリのポンピドゥーセンターや関西国際空港ターミナルビルを手掛けたレンゾ・ピアノによって設計、自然の中ひっそりと佇むようにそれはある。入場料が25フランもかかるので入るのやめようかとも思ったが国際学生証提示で12フランになり入場を決意。この美術館で最も印象的なのは内部の展示室である。半透明のガラス屋根からの光と少しの間接照明のみで成り立っているのだ。訪れたのは夕暮れ時だったがほとんどの展示室は自然光のみで天井からぼんやりと降り注ぐ光がとても心地良い。訪れる時間帯によって様々な表情を見せてくれるだろう。おそらくメンテなどは大変になるだろうが、何でも効率重視で設計していたらこのような建物は絶対にできない。人の手をほんの少し加えてやるだけで、ほんの僅かな非効率が最高の空間を創り出す良い事例だ。
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